通信制高校を卒業したら、進学するか就職するかという選択が待っていますよね。
特に就職を考えている学生のなかに、「通信制高校卒業って就職は不利なんじゃないか」という不安を抱えている人は決して少なくはありません。
それでは、今回は実際に通信制高校の卒業後の就職率や就職状況を踏まえて、通信制高校卒業であるということは就職に不利に働くかどうかを検証してみました。
目次
通信制高校の就職実績
学校基本調査「高等学校(通信制)卒業者の産業分類別就職者数」(e-Stat)によると、平成29年度の通信制高校の就職に関するデータは以下のようになります。
卒業者数 | 52,266人 |
---|---|
就職者数 | 10,247人 |
卒業者に占める就職者の割合 | 19.6% |
出典:文部科学省平成29年度学校基本調査結果
このデータによると、通信制高校を卒業した後、約5人に1人は就職しているということがわかります。
しかし、卒業後に進学も就職もしなかった人は全体の約40%を占めていて、やはり通信制高校卒業ですと就職することはなかなか難しいのは現状です。
もちろん、通っていた通信制高校によって就職率も変化するため、一概には言えませんが、このような状況があると意識しておく必要があります。
通信制高校卒業者の主な就職先
では、通信制高校を卒業した人はどのような仕事に就いたのでしょう。
学校基本調査「高等学校(通信制)卒業者の産業分類別就職者数」(e-Stat)によると、就職先の業種TOP 5は以下の通りです。
就職先業種 | 就職者の割合 |
---|---|
製造業 | 約20% |
宿泊業、飲食サービス業 | 約15% |
卸売業、小売業 | 約11% |
建設業 | 約10% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 約9% |
以上のデータと全日制高校のデータと比べてみると、製造業に就職した学生は約39%とトップであることは変わりませんが、大きく違うところは宿泊業、飲食サービス業の割合が約6%と通信制高校よりだいぶ低い数値となっています。
通信制高校を卒業した場合、多くの人が製造業につくことは変わらないのですが、全日制高校卒業の人に比べて飲食サービス業や宿泊業に就職する人が多いようです。
通信制高校には様々な特色があるため、学校ごとに就職先の傾向が異なります。
しかし、一般的に人気が高い事務系への就職率は低く、狭き門といえます。
可能性は0ではありませんが、通信制高校卒業後の就職先は選択の幅が小さいということは事実です。
したがって、上記の仕事に就きたい場合はよいのですが、もし他の職種に就職したい場合は、専門学校、大学に進学したり、資格を取ったりするなど、別の努力が必要でしょう。
通信制高校卒業は就職に不利とはいえない
上記のデータをみると、「やはり通信制高校卒業は就職に不利だね」と思ってしまう方はいるかもしれません。
しかし、実際にそんなことはまったくありません。
なぜならば、通信制高校でも全日制高校でも、まったく同等の高校卒業資格を得ることができるからです。
また、就職する時に履歴書に「通信制課程」と記載する必要もないため、聞かれない限り面接官に通信制高校に通っていたと知られることもありません。
通信制高校は就職に不利というイメージ
しかし、世間一般では、通信制高校に通う生徒が不登校だったりとか、集団行動ができなかったりとか、精神面に問題があるような生徒が多いなど、ネガティブなイメージをもっているのも事実です。
しかし、通信制高校に通っている生徒の中には、大学受験に専念したいから必要な科目だけ履修できる通信制高校で学びたい生徒やスポーツや芸能活動を行っている生徒、専門学校で学ぶスキルを学んでおきたいという生徒など、自由な、個性を生かせる校風にあこがれを抱いて入学する生徒もたくさんいます。
残念なことに、前述のネガティブなイメージが先行してしまっているので、通信制高校に通っていたというだけで「この子はどこか問題があるのかもしれない」と思われてしまうこともあります。
ネガティブなイメージの中で就活を頑張りましょう
本来ならば通信制でも全日制でも、ちゃんと卒業できれば学力の面の差はあまりないはずですが、採用する企業側も通信制高校に対して知識が乏しくて、偏見を持っている人がたくさんいます。
現在はそのようなネガティブなイメージは払拭されつつありますが、就活の際、面接官がそういう不安を抱えていることを念頭に置いておく必要があるでしょう。
通信制高校卒業から就職するためにできること
それでは、通信制高校卒業後に就職する場合は、どのような準備をしておくべきでしょうか。
技能や資格を取得する
通信制高校を卒業した後、そのまま就職する場合は、ビジネスの場でも役立つような資格を取得しておくと有利でしょう。
そうすることで履歴書も充実し、面接官にアピールしやすくなります。
また、通信制高校の中には専門的な技術を学べる高校も多数存在します。
例えば、「美容師コース」や「コンピュータープログラムコース」など専門的な資格取得をサポートするコースを用意してくれる通信制高校もあります。
自分の将来進みたい道がすでに決まっている場合は、こうしたコースを選ぶことで将来につながる勉強を進めておくことがおすすめです。
通信制高校は一般の高校と比べて時間を自由に使えるため、空いている時間を上手く使い、就職に有利な資格の勉強を行いましょう。
将来やりたいことがはっきりしていなくても、就活で役立ちそうな語学(TOEICなど)やコンピューター関連(MOSなど)の勉強をしておくと、就活で役立ち、有利に働く可能性が大きいです。
アルバイトで実践経験を詰んでおく
実際に社会に出て、働いてみないと身につけられない経験、スキルもたくさんあります。
例えば、お金の取り扱い方や敬語の使い方、報告・連絡・相談の大切さなど多くのことを学ぶことができます。
また、アルバイトを長く続けられた経験は信頼にもつながるため、就活にも有利に働くでしょう。
さらに、一部の企業には「社員登用制度」を設けているところもあります。
これは長くアルバイトを続けてくれている人を直接正社員として雇用する制度です。
企業側は、人材育成にかかるコストを削減するため長く続けてくれる人材を求めているため、数回の面接でしか判断できない採用よりも、長く働いてくれている人材を雇うほうが効率がいいです。
そして、この場合は学歴は最低ラインさえ超えればOKです(ほとんどの場合は高卒でOK)。
自分にあったアルバイトを見つけることができたら、社員登用制度を狙ってみるのも一つの手です。
就職サポートがしっかりとした通信制高校を選ぶ
就活ではしっかりと戦略を練って会社を選び、採用に臨む必要があります。
面接時の服装や受け答え、履歴書の書き方など様々な対策が必要となってきます。
一般の学校には就職課やキャリアサポートがこのような対策を講じてくれることが多いのですが、通信制高校には就職サポートがない高校もあります。
就職サポートがない通信制高校に入った場合、自分の力で就職活動を行わなければならず、心細いでしょう。
通信制高校卒業後に就職を考えている方は、高校選びの段階から手厚い就職サービスがあるかどうかチェックしておきましょう。
また、行きたい業界が決まっている場合は業界特化のサポートが行われている学校を選択しましょう。
こうしたサポートが強い学校を選べば、通信制高校でも就職が不利になる可能性を減らすことができます。
就職は容易ではない
通信制高校でも、全日制高校でも、就職というのは容易に行えるものではありません。
通信制高校にただ漫然と通っているだけでは就職は厳しいです。
また、ネガティブなイメージを払拭するため、面接ではハキハキと元気よく受け答えをし、自分がやりたいことを伝えましょう。
自由な時間が多いことを利用して、しっかりと準備を行って就活に臨みましょう!